2030年までにカーボンニュートラルを目指し、
都市型事業所モデルの構築を。
貴事業所の基本情報(設立年、従業員数、主要事業など)を教えてください。
若山:当事業所は、1940年に電気機関車工場として操業を開始しました。在籍人員は約9,000名(駐在、グループ会社含む)で、エネルギーや社会インフラ関連の各種製品を製造しています。特に、エネルギーソリューション、鉄道システム、セキュリティ・自動化システムなど、多岐にわたる製品・ソリューションを提供しており、持続可能な社会の実現に貢献しています。


事業所において地球温暖化に対し、どのような課題意識を持っていますか?
若山:当事業所では、2030年にカーボンニュートラルを目標に掲げ、エネルギー消費の削減、太陽光など自然由来のエネルギーの利用、そして足りない部分は再エネ電力を購入するという3本柱で取り組んでいます。これらの取り組みを通じて、事業活動全体の調和を図りながら、地球温暖化対策を進めています。特に、地域社会との連携を深めることで、環境保全と地域貢献を両立させることを目指しています。
村田:エネルギー消費量の見える化を行い、全従業員が節電の貢献度を把握できるようにしています。これにより、個人の意識を高め、全員参加の省エネ活動を推進しています。また、生産設備の効率改善や、地域と連携したエコ除草の取り組みなど、多面的な対策を講じています。温暖化の影響が地球規模で深刻化する中、今後はさらに創エネを進め、事業所全体でのGHG排出量削減を強化していく方針です。
阿武:現状では、環境証書の購⼊も含めた様々な GHG 排出量削減を進めていますが、本質的には省エネや創エネによる削減が必要だと考えています。平均気温の上昇が⽣態系に与える影響を踏まえると、⼀企業だけでなく、社会全体での取り組みが求められています。当事業所では、少量多品種⽣産⼯程にスケジュール最適化ツールを導⼊するなど、省エネ⽅法を⽣産部⾨と企画部⾨が共に検討しているのが特徴です。事業所としてカーボンニュートラル実現に向けてビジョンを打ち出し、チーム体制で取り組みを進めています。
トップレベル事業所の認定申請の動機を教えてください。
村田:トップレベル事業所の認定を申請した動機は、建屋や設備レベルの性能・運用面を事業所単位で評価してもらえる点にあります。複合事業所である府中事業所では、 テナントの入れ替えが頻繁に発生し、その都度、最新の環境基準を満たすための整備を行っています。このように、座礁資産を避け、 常に魅力的な事業環境を維持するための取り組みを適正に評価してもらうには、トップレベル事業所の認定制度が最適だと考えました。 また、事業所の特徴を理解し、最適な設備構成を整えた上で効率的な運用を行うことが求められるため、管理運用の手腕を評価される点にも魅力を感じ、申請を決意しました。


認定の為に取り組んだ具体的な活動や設備投資を教えてください。
村田:認定取得のために特別な施策を行ったわけではありませんが、設備リストの精度を高めることが重要だと考え、全ての設備をリスト化しました。これにより、老朽更新計画の立案が容易になり、何が不足しているのか、何が必要なのかを明確に把握できるようになりました。この設備リストを活用し、老朽更新、燃料転換、高効率化、不要設備の廃却、管理水準の統一などの施策を実施しました。また、省エネ施策を類似設備に一斉展開する際にも、設備リストは非常に効果的です。見える化管理を徹底することで、設備更新をスムーズに進めることができました。
阿武:ちょうど建物を新築するタイミングだったこともあり、評価項⽬に沿った設備や取り組みを導⼊する動きがありました。具体的にはエネルギーの使⽤・未使⽤状況の⾒える化を進めたり、緑化も積極的に取り⼊れたり、ライトシェルフという⾃然光を活⽤して照明負荷を下げる設備も導⼊しました。建設業者とも密に連携を取り、評価項⽬を考慮した設備設計を進めたことで、認定取得に貢献できたと考えています。
認定を受けるために特に苦労したこと、または工夫したことはありますか?
村田:構内の数千もの設備から、ガイドライン評価に合致する設備を調べ上げ、エビデンスを揃えることには多くの苦労が伴いました。府中事業所では2012年に環境担当が取得を試みましたが、必要な情報を集めきれず、断念せざるを得ませんでした。しかし、2017年に設備動力担当が1年6ヶ月をかけてようやく調査を完了しました。設備動力担当は事業所の工事を一手に引き受けており、設備に精通しているため、どの設備がどこにあるかを把握していたことが成功の要因です。また、分野別にリーダーを選任し、調査チームを牽引するなどの工夫を行いました。マネジメントリーダーがこれらの情報を取りまとめ、何が足りていないか、どのようなポテンシャルがあるかを判断し、積み上げていきました。この取り組みは一人で申請できるものではなく、多くの関係者が関わることが重要でした。その結果、関係者は実際の業務においてもガイドラインを意識して業務を遂行するようになり、認定を受けたことで組織全体にプラスの影響を与えたと感じています。

トップレベル事業所認定取得のメリットを教えてください。
村⽥:設備⽼朽更新や新しい取り組みの提案が容易になりました。また、環境対策が第三者によって評価されることで、他社や⾃治体など事業所外からも明確に評価されるようになりました。さらに、設備⽼朽更新時に『何をどう更新するのか』という優先すべきガイドラインが定まったことも⼤きな成果です。

貴事業所における環境対策の今後の方向性を教えてください。
村田:府中事業所としては、長期的な視点で『気候変動への対応』『循環経済への対応』『生態系への配慮』を重要課題ととらえ、以下の3つの活動を中心に進めていきます。
1つ目、『気候変動への対応』として、省エネ、再エネ、創エネを同時並行的に対応し、2030年までにカーボンニュートラルを目指します。2つ目、『循環経済への対応』として、廃棄物の発生抑制および再生利用拡大に取り組み、廃棄物排出量の抑制を目指します。3つ目、『生態系への配慮』として、化学物質排出量削減への取組み及び、生き物の生息環境の保全・向上を目的に、周辺緑地の中継地点を担う生態系ネットワークの構築を目指します。
これら3つの活動を通じて、持続可能な社会、脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の実現を目指していきます。
若⼭:これらを実現するために、まずは再⽣可能エネルギーの電⼒購⼊を積極的に活⽤しますが、2050 年に向けて⾃社内で省エネ率と創エネ率を段階的に⾼めていく計画です。これにより、再エネ買電率を効率的に低下させていきます。さらに、インフラを主軸とする企業として、発電、買電、省エネを最適なバランスで組み合わせることで、環境規制が厳しくなる都内においても事業所の持続可能性を確保します。これにより、都市型事業所の新たなモデルを構築し、環境と経済の両⽴を図っていきます。